PCデポの「高額請求」問題。どうしてそんな契約が通用したのか?を、構造問題として考えてみます。

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ここ数日、PCデポの「高額請求」がニュースで大きく報道されています。「解約料20万円」もすごいですが、「契約は適正」という、当初の会社のコメントもすごいです。

長くそれが当たり前で経営していると、感覚がおかしくなっているのでしょう。「消費者を何だと思っているのだろうか・・・」と驚かざるを得ません。

livedoorニュース: PCデポのサポート契約解除料が「10万円」!?批判殺到でコメント「改善策を検討」

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実はずっと前から聞こえていた、「PCデポの高額契約」

実は、当教室にご相談に来られた方の中にも、「PCデポで高額のサポート契約を結ばされた」という訴えを口にされた方がいらっしゃいました。オープンしてまだ1か月もたたないころです。「PCデポには二度と行かないことですね」と言って帰られました。

ですので、「PCデポの高額請求」は、最近はじまったものではないのです。今回表に出たのは、契約者の息子さんが執念をもって領収書を確認し、ツイッター上で暴露したからです。

多くの方は、仕方なく解除料を支払うか、または解除しないで今でも高額のサポート料金を支払い続けていらっしゃることになります。

今回暴露された方の場合、月額14,000円程度の支払いだったということですから、たった100人被害にあっているだけでも、PCデポにはなんと年間1680万円のサポート料金が恒常的に売り上げとして入っていることになります。これは、問題になっている「解除料」ではなく、「月額料金」の100人分です。

実際にどれほどの規模になるのか不明ですが、年商532億円(連結+フランチャイズ)というPCデポの経営構造に大きな影響を与えることは間違いないと思われます。

業界の構造からみた、PCデポの高額契約の「構造と悪質さ」

ではなぜ、PCデポはこのような「高額契約商法」を編み出し、実行したのでしょうか? また、なぜ多くの消費者がそれにひっかかり、高額の月額料金を支払い続けるはめになってしまったのでしょうか?

そこには、パソコン業界のかかえる構造的問題があり、また、パソコンという商品に関わる独特の「わかりにくさ」が関係していると思います。

今回の記事では、これらの点を詳しく見てみたいと思います。

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「パソコンが売れても利益などない」パソコン業界の構造的問題

筆者である私は、かつて家電量販店の店頭に立っていました。そこで毎日聞かされていたことは、「パソコンが何台売れても利益はほとんどない」という事実です。

読者の皆さんは、「パソコンは高い」と思っていらっしゃるかもしれませんが、価格競争が激しい駅前の量販店では、パソコン販売の利益は、どんなに多くても10%未満で、5%に届かないこともザラです。価格コムの値段に合わせたりしたら、まず利益ゼロです。

1990年代までは、パソコンはまだ「新しい商品」でした。このころは、新製品であれば、ほとんど値引きなしで販売されていたと思います。ソフトを数本もつければ50万円、なんていうこともざらにありました。

NEC、富士通、パナソニック、東芝、ソニーといった国内パソコンメーカーは、みなこの時代に自社のブランドを築きました。

しかし、2000年代になりますと、大規模な業界再編が起こり、パソコン業界は「商品価値による競争」から、「価格競争」へと主軸が切り替わります。2002年、米HPがパソコン大手コンパックを買収。続いて2004年には、なんと「あの」IBMのパソコン部門を香港の企業レノボが買収して、世界に衝撃が走りました。

これと呼応して、販売店も構造改革がおこっていきます。その一例として、ビックカメラは1994年以来、「株式会社ビックパソコン館」を別法人として立ち上げてパソコン販売を専門に行っていましたが、2004年、これをビックカメラ本体に合併しています。

パソコンの需要はしだいに伸びていきますが、メーカーと販売店の利益は大きくならない。そんな時代がはじまったのです。

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残された「利益の出るサービス」それは「パソコンサポート」

パソコン本体の販売で利益が出ないとすれば、販売店はどうやって成り立っているのか? それは周辺機器の販売と、インターネット回線販売、そしてパソコン販売にともなうサポートサービスです。そこで、PCデポだけでなく各社とも、独自のパソコンサポートのサービスを提供しています。

量販店でパソコンを買った方はお分かりだと思いますが、購入時に必ずすすめられるものとして、

  • マウス・キーボードカバー・WiFiルーターなどの周辺機器
  • インターネットの新規契約・乗り換え、モバイルルーターの契約
  • サポートの契約

があります。量販店は、これらの同時販売によって利益を出し、経営が成り立っています。中でも、潜在的に根強い需要があり、価格が下がりにくいのが「パソコンサポート」です。

パソコンが「扱いにくい」ゆえに需要があるパソコンサポート

パソコンは、普通に使うことはできても、いざトラブルが起こった時には、まだまだ「普通の人」には対応できない部分がとても多い商品です。また、扇風機や掃除機のように、「買い替えればとりあえず使えるようになる」ものではなく、設定のやりなおし、データ移行など、新品に替えるだけでも何かと技術が必要になる商品でもあります。

パソコンやOSの進歩で、だいぶ簡単にはなりました。筆者としてはもっと簡単になるのではないかと予想していましたが、思いのほか「使いやすさ」の面での進歩はノロノロしており、まだまだパソコンサポートの需要はなくならない、と考えています。

パソコンサポートは、サービスの構造上、価格が下がりにくい

パソコンサポートは、その経費の大半が人件費と交通費です。パソコンの内部に精通した人材をそろえ、待機させるには、それなりの経費がかかります。パソコン本体やパーツのように海外生産するわけにもいきません。

さらに、誰しもそうですが、トラブルの緊急時にサポートの価格を比べている余裕はないことが多く、価格競争もそれほど働きません。パソコンサポートは、こういった理由で、価格が下がりにくいのです。

最近では、NTTやJCOMなどのインターネット回線会社が、月額500円程度で「リモートサポート」を提供するようになりました。

この「リモートサポート」は大変すぐれており、オペレーターがあなたのパソコンの画面を直接操作してトラブルを解決してくれます。インターネットがつながっている環境では、これがおそらくベストのサービス形態です。(契約しているのに忘れている方がとても多いです。大変便利なサービスですので、契約しているなら使わない手はありません。ぜひ一度、ご契約のインターネット回線会社に確認してみて下さい。)

ただし、インターネットがつながらないトラブルや、パソコン本体に手を加える必要があるサービスなどは、まだまだ持込/出張サポートに依頼していただく必要があります。

競合の少ない「地域密着」×パソコンの「分かりにくさ」を悪用したPCデポ

このように、需要が多く価格も下がりにくいパソコンサポートですが、PCデポはこの特性を悪用し、通常考えられない高額のサービスを「編み出し」て、売りつけていたと考えられます。

問題になっている、PCデポの「プレミアムサービス」の料金表がこちらです。

PCデポ「プレミアムサービス」の料金表

PCデポ「プレミアムサービス」の料金表

(出典:  http://www.pcdepot.co.jp/shop/tsp/plan/)

通常は一つ一つ提供されているサービスが、「プラン」という形で設定されています。よく見ますと、私どもの目から見て「不要」「高すぎる」サービスが多いのに驚きます。

例えば一番安い「クラウドバックアッププラン 月額2,000円」の場合。

  • パソコン一台初期設定・・・他店では通常3,000円程度~(設定の程度による)
  • 初回・買い替え時データサポートサービス・・・他店では通常5,000円程度~
  • トラブル復旧・・・追加で別料金あり トラブル時 持込5,000円、出張10,000円
  • 店頭点検・定期バックアップ・・・バックアップは追加料金あり(優待価格)
  • ozzioID・・・(Googleなどを利用すれば無料)
  • ozzioクラウド自動バックアップ・・・(Googleドライブなどを利用すれば無料)
  • 遠隔ロック・遠隔消去・・・(スマホに関してはGoogle/Appleのサービスが無料)
  • ネットショッピングサポート・・・PCデポ系列のショッピングサイトのみ対応

このように詳細に検討しますと、「購入時初期設定・買い替え時データ移行・店頭点検」のために、年間24,000円を支払うことになります。しかも、買い替え時のサポートや点検を入れることによって、次回もPCデポで購入しなければ無意味になるようにしたり、ネットショッピングで自社のサイトに誘導したり、これ以上の利益が流入する仕組みになっています。

このほかのプランも、普通に市場で買った場合の金額と比べてみると、

  • 「ウィルス対策」と「ネット詐欺対策」・・・通常、一つのソフトで提供され、5台を3年で5000円程度~(月額換算138円~)
  • 遠隔リモートサポート・・・・上で書きました通り、インターネット回線会社提供のサービスが「月額500円」程度で回数無制限
  • 思い出ビデオ・・・昔のテープ形式のビデオのみ対象。別途PCデポのダビングサービス利用が前提。デジタル映像ならGoogleのサービスを使えば無料
  • 緊急地震詳細速報・・・当ブログ別記事で書いていますが、無料アプリで受信可能

このように、どのプランでも到底価格に見合わないサービス内容なのですが、それでも販売できていたのは、ひとえに利用者の知識のなさにつけこんだ、としか言いようがありません。知っている者が見れば「どうしてそんなにかかるの」と思えるような料金でも、他の競合店も少ない地域で、何も分からない初心者の方が執拗に勧誘されれば「そこまでやってくれるなら」と高い月額料金の契約を結んでしまうことは、ありうると思います。

今回問題になったケースでは、一人暮らしの高齢者が、10台対応の最高額の「ファミリーワイドプラン」をすすめられ、さらに使わないインターネット回線契約も結ばされていたようです。このプランには、iPadのリース料金まで含まれていますが、あくまで「リース」であって、何年加入していても自分のものにはならないのです。

当教室もそうですが、量販店の少ない地域では店舗によるサポート体制も手薄であり、ましてパソコンに詳しくない方にとっては「どこに相談していいか分からない」状態であることから、サポートサービスに対する需要は非常に強いのです。

しかし、だからといって不必要なサービスを高額で売りつけていれば、利用者はそのうち「パソコンそのものから遠ざかってしまう」のは明らかなのです。

パソコン販売で利益が出ない中、こんなサポート契約に依存して経営する会社とは。

おそらくPCデポも、他社と同様に、パソコン販売では利益が出ない中で、このような「サポート商法」を編み出したものと思われます。

ビジネスは、原則として「お客様の役に立って、その結果利益が出る」ものであって、役に立たないものを高額で売りつけることをビジネスとは言いません。それは「詐欺商法」と言います。

このような、消費者の無知につけこんで高額の契約をさせるような商法に依存していれば、いずれ市場からしっぺ返しを食らいます。PCデポの今回の問題は、その好例であろうと思います。

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こんな中で筆者がパソコン教室を営業している理由とは・・・

さて、いやな話が続きましたが、このような中で筆者は、パソコン教室を営業しています。

パソコン教室も、以前高額請求で問題になったことのある業界です。今でも、「MOS資格を取るには10万円ではきかない」と言われます。(当教室はMOS1科目32,400円+通った分だけ月々3,240円です)

何かと高くつくイメージの多いパソコン業界で、なぜ私がパソコン教室を運営しているかと言えば、「同じお金を使うなら、ご自身でパソコンをできるだけ管理できる知識を身に付けていただきたい」からです。

だます業者がいるなら、対抗できるのは「知識」であり「相談相手」です

当教室ではパソコンサポートも、市場でよくある程度の価格で承っています。しかし、特に生徒様に関しては、「できるだけ教室で、質問しながら自分で直していただく」方向で運営しています。

もちろん、一回質問しながら治せても、次も自力ではできないかもしれません。でも、何回かやっているうちに、少しずつパソコンの仕組み、なおしかたのコツは分かってくると思います。当教室は入会後月額3,240円の固定料金ですので、何百回でも同じ質問をしていただいて大丈夫です。

だます業者がいるなら、対抗できるのは「知識」であり「相談相手」です。

初心者の方がパソコンを使うとき、いろいろな出費は避けられない面がありますが、同じお金を使うなら、ぜひ、ご自身の身につくことに、使っていただきたいのです。また、当教室は時間制料金ではないので、毎日習いに来ても料金が増えることはありません。気軽な相談相手として、あてにしていただける料金体系にしています。

まだまだオープン半年もたっておらず、利益が出ているかと問われれば汗をかくしかないのですが(^-^; 「パソコンをもっと、みんなのものに。」このブログのトップ記事でかかげた言葉を胸に、志木駅前でがんばっております。

お近くの方は、ぜひいちど遊びにきて、何でもお気軽にご相談ください。

 

以下、本文中で書ききれなかった内容を、参考のため追記します。

参考:1990年代に、すでに始まっていたパソコン低廉化の流れ

パソコン本体の販売では、利益が出ないような状態。マーケティングの世界では「コモディティー化」といいますが、その予兆は、1990年代にすでに出ていました。

それまで各社が各様に開発していたパソコン本体を、IBMが提唱した共通規格「PC/AT互換機」という形式にのっとって共通仕様にすることが、市場のスタンダードになっていたのです。このスタンダードの上にはじめて、「Windows3.1」「Windows95」が登場し、インターネットの普及とあわせて、パソコンが広く家庭にまで普及する基礎をつくりました。現在皆さんが使っているパソコンは、ほとんどすべて、このPC/AT互換機か、またはApple社のMacintoshのどちらかになっています。

この共通規格の登場が、パソコンの価格を下げ、ひいては現在の低利益構造につながっているのです。ですから、現在目にするパソコンの普及は、その出発点から「パソコン本体ではもうからない」ビジネスモデルを内包していたといっていいでしょう。

参考:アップル社の独自の高収益モデル

この流れと、関係なく高収益モデルをひた走っているように見えるのが、アップル社です。

アップルは、特にiPhone、iPadの販売を中心に高収益をあげています。iPhoneは、分割しないで買ったことのある方は分かると思いますが、パソコンより高いです。「高いのに爆発的に売れる」理由は、「圧倒的な商品力」「ソフトウェアとハードウェアの一体的開発」「競合他社の参入を許さない秘密主義」だと言えるでしょう。

単に、共通仕様にのっとらないパソコンを販売するだけでは、ただちに淘汰されるのは間違いありませんが、アップル社の製品は「他の追随を許さない圧倒的な商品価値」を備えています。iPhoneしかり、MacBookしかりです。(詳しくはまた別稿にていずれ書いてみたいと思います。)

この結果、例えばiPhoneの粗利益率は70%にのぼると言われています。(原価が30%しかないってことです!!)

また、iPhone, iPadのアプリは、AppStoreからしか買えない仕組みになっています。このApp Storeの収益も、アップル社の優位性となっています。

2014年に、ソニーがパソコン部門を「VAIO株式会社」に譲渡して話題となりましたが、ここまで長く自社ブランドで続けられたのは、やはり、共通仕様「以外」の部分でのVAIOの商品力だと思います。

国内パソコンメーカーはいずれも、NECのパソコン部門がレノボに統合されるなど、再編過程にありますが、世界的な再編の波と比べれば10年は遅れています。アップルと違い、「商品力」ではなく「日本市場の特殊性」を頼りに延命してきた国内パソコン業界には、これから大変厳しい道のりとなるでしょう。

 

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