Microsoft Wordには、特定の個所から強制的に次のページに送る機能があります。
「改ページ」です。

この「改ページ」を挿入する方法は2つ(※ショートカットキー「Ctrl+Enter」を含めると3つ)あり、一般にはこの2つの操作は同じものだと認識されているケースが多いのではないでしょうか。当店もそう思っていました。

ところが、この「ページ区切り」ボタンと、「改ページ」ボタンは、微妙に動作が違うものだった、というのが本記事の内容です。
「ページ区切り」「改ページ」実は違うものだった
次のように、なんでもない箇所で行うと、「ページ区切り」も「改ページ」も同じものに見えます。

しかし、場面が違うと、このぐらい違います。

細かい部分はまだ検証中なのですが、現時点で確認できた「違い」をまとめてみます。
「ページ区切り」の動作 (Ctrl+Enterも同じ)
「ページ区切り」を段落頭でおこなった場合
・カーソル位置の段落が、次ページに送られる
・元の段落は、「スタイル」と「段落書式」がクリアされ、「改ページ」と段落記号が入る
通常は、この方法が最も自然に改ページできます。
一般的にもっとも推奨すべき改ページ方法だと思われます。
元の段落の、「スタイル」に含まれない個別の「フォント」設定は保持されます。
例えば、改ページ位置でフォントの色「赤」を設定していると、改ページ後に「改ページ」マークの前に文字を打つと赤くなります。

「ページ区切り」を段落途中でおこなった場合
・カーソル位置以降の内容が、別段落として次のページに送られる
・カーソル位置以前の内容は、書式はそのままでカーソル位置で改行される。
・改行後の新しい段落に「改ページ」と表示され末尾に段落記号が入る。
カーソル位置と、改ページ記号の後、2か所に自動的に改行が入るため、一行増えます。
(この自動的な改行を削除すると、次で解説する「改ページ」と同じ結果となります)

マクロ記録を行うと、次のように記録されます。

InsertBreakメソッドについてはこちらを参照ください。

「wdPageBreak」の意味はこちらを参照ください。

引数Typeを省略した場合、既定値は wdPageBreakだそうなので、次のコードも同じ動作になります。

「改ページ」の動作
「改ページ」を段落頭でおこなった場合
・カーソル位置の段落が次ページに送られる
・元の段落は、書式を保持したまま空の段落として残り、「改ページ」と段落記号が入る
・箇条書きの番号はひとつ進んでしまいます。
・塗りつぶしや罫線などがあると、改ページ前にも残ってしまいます。

「改ページ」を段落途中でおこなった場合
・カーソル位置以降の内容が、別段落として次のページに送られる
・カーソル位置以前の内容は、書式はそのまま、カーソル位置に「改ページ」と表示され、行末で改行され段落記号が入る。
段落番号付きの見出しスタイルで改ページすると、不自然に見えます。
あまりない例ですが、仮に本文中で改ページする場合は、この方法が一番自然と思われます。


マクロ記録を行うと、次のように記録されます。

実は「wdPageBreak」列挙の中に、「0」というTypeは、定義されていません。


ここからは想像になってしまうのですが、「改ページ」は、” .InsertBreak Type:=None”を意図した動作になっているのではないか、と思います。
TypeがディフォルトのwdPageBreakではなく、「無し」、つまり、「単純に改ページ記号を挿入するだけ」を意図しているのではないか、という推定です。
ただし、Word 2003→2007のときに、改ページの動作が変更されたそうです。
Word2003の改ページとWord2007の改ページ属性について | Microsoft Community
改ページ記号の後に自動的に改行(段落記号)が追加される仕様になったようです。
確かに、「.doc」で作成した互換モードのファイルでは、「改ページ」は次のような動作になっています。

試してみて、「ああなるほど」と気づかされたのですが、「改ページ記号」は、それ自身で段落を改めるものではないということです。
「改ページ記号」の後の改行が無ければ、ページをまたいだ同一段落となり、インデント・タブ・段落罫線などもすべてリンクした状態で編集できるということです。
※ただし、オプション→詳細→互換オプションの適用先→「ページ区切りと段落記号を分割する」を「オフ」にした場合は、さきに解説した、現行バージョンのWordと同様に、改ページ後に自動的に改行が入る動作となります。

まとめ
たまたま、レッスン中に改ページ動作の違いが目についたので、今回すこし詳しく追ってみました。
まとめると、次のように言えるかと思います。
一般的な推奨は「ページ区切り」またはCtrl+Enter
この方法がもっとも自然に改ページできます。
本文中で改ページする場合のみ「改ページ」
あまりないとは思いますが、本文中で改ページしたい場合は「改ページ」が最も自然です。
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