マイクロソフトが、7月29日に迫った「Windows10無料アップグレード期限」を控えて、その更新の「強制度」を増している今日このごろ。
当ブログの記事でも取り上げ、多数のアクセスを記録しています。
それから約一か月たちましたが、やはりWindowsパソコンをお使いの方からのご質問が増えています。
「勝手にWindows10になってしまったのだけど、戻してもらえるかな?」 「うちのパソコンも10にしたほうがいいんですか?」といったご質問です。
勝手にWindows10にされてしまった方は、いったいどうすれば・・・
元に戻す方法はこちらです
Windows 7, 8, 8.1 から、勝手にWindows10にされてしまった場合は、
「スタートボタン」→設定→更新とセキュリティ→「Windows 7(8)に戻す」と操作すれば、戻すことができます。
やり方を開設したサポートサイト(NEC提供ですが、NEC以外のパソコンでも同じです)はこちら
ですが、さきの記事でも触れました通り、100%元通りにもどるという保証はありません。多くの場合、ぶじに戻せているようですが、一部のデバイスの設定が戻らなかったり、正常に使えないケースも報告されています。
そのまま使うという前向きな選択もある
当教室はマイクロソフトの回し者ではありませんが、すでにWindows10になってしまって、正常に動作している方には、念のため、「そのまま使い続ける」という選択肢をご提案します。
理由は次の通りです。
- 上記のように、せっかく正常に動作しているのに、あえて戻すと不具合が出る可能性が少しだけある(少しだけですが)
- Windows10のまま使った方が、今持っているパソコンの使える年数が増える(特にWindows7だった方)
- Windows10の方がパソコンの動きが軽くなり、容量も増える(特にWindows7の方)
もちろん、ご事情によって元に戻す必要がある場合には、当店にてサポートいたします。アップグレード後32日目以降は、もう元には戻せなくなります。ご相談はお早めにお願いします。
「勝手にWindows10にされる事件」にみる、「時代の変わり目」
勝手にアップグレードされては困る人が、こんなにいるのに・・・
今まさに進行中の、いわば「勝手にWindows10にされる事件」。これまでのパソコンの歴史からみれば、一大事件です。
多くの皆さんは、買ったパソコンのWindowsの操作にやっとこさ慣れ、新しいのに変えるなんていやだ、と感じていらっしゃると思います。
パソコンメーカーは多くの付属ソフトをつけて「自社のメリット」にしています。TVチューナーなど、この付属ソフトなくしては使えない機能があることも。これらは、特定のWindowsでしか動かないものがほとんどです。ですので、特に国内メーカーのパソコンは、「Windows10非対応」がかなりあります。
また企業では、自社の基幹システムと連携して使用したり、独自開発の業務用アプリケーションを導入しています。これらを、Windowsの新しいバージョンに対応させることは、費用と手間がかかるため、更新するにはひとつの経営的な決断が必要です。おいそれと「自動で無料ならどうぞアップグレードしてください」とは言えません。
このような様々な理由で、Windows10に今すぐ変わっては困る、という方が大勢いらっしゃる中で、マイクロソフトが実施した「強制アップグレード」。とうとう国会質疑でもとりあげられるほどの「事件」に発展しました。
従来であれば、これほどのクレームが沸きおこれば、メーカーは平謝りして仕様を変更するのが常でした。しかし、今回のマイクロソフトの対応は、こまごまとしたサポートを強化しつつも、更新自体は続行しています。なにか、今回は今までとは違います。
「時代の変わり目」を意味する今回の事件
書いている私が感じているのは、「時代の変わり目」を意味している事件だなあ、ということです。といいますのは、次のような点においてです。
- パソコンのOSは「商品ではなくサービスになる」時代
- パソコンの「日本独自のガラパゴス仕様」が通用しない時代
- パソコンの「中身」が「自分のもの」ではなくなり、アカウントやクラウドだけが「自分のもの」になる時代
パソコンのOSは「商品ではなくサービスになる」時代
すでにMacOSやスマートフォンでは当たり前になっていますが、Windows10の登場で、パソコンのOSはもはや、お金を出して買うものではなくなります。
マイクロソフトは「Windows10は最後のメジャーアップデート」だと言明しています。これはつまり、今後のWindowsは「お金を出してそれ自身を買う商品」ではなく「パソコンを買った人が受けることのできるサービス」になる時代、だということを意味しています。
5年もすれば、Windows10が「いまのWindows」と呼ばれ、それ以前のWindowsはまとめて「昔のWindows」と呼ばれるようになるでしょう。そして、「昔のWindowsは、ひとつひとつすごく変わっていて、慣れるの大変だったんだ。新しいのが出ても、買わないといけなかったんだよ」「ええっ、そうだったんですか、びっくり!」なんていう会話が交わされるようになるでしょう。
30年前からパソコンを触っている者としては、こんな経験は数えきれないほどあるのですが、特にWindowsXP以降にパソコンに触れた方には、大変驚くべき事態だと思います。しかし、逆に言えば、WindowsXP以降、これほど驚くべき製品モデルの革新がなかった、というのは、ある種の「停滞」を意味するものです。
パソコンの「日本独自のガラパゴス仕様」が通用しない時代
今回の事件で、どういうわけか表に出てこないのですが、「国内メーカー独自仕様のWindows7パソコンが、勝手にWindows10になってしまい、いろんな機能が使えなくなっている」はずです。
当店で修理させていただいたお客様のVAIOでも、TVチューナー機能がWindows10に対応していないため、ソニーが公式に「お客様のパソコンはWindows10にはできません」と回答していたケースがあります。このケースでは、修理時にすでに「Windows10に更新」アイコンが出ていたため、当店で抑止の処置をとり、以後はアップグレードを促す画面は表示されなくなっています。
おそらく国内のパソコンメーカーには問い合わせが相当数いっているはずです。
今後、Windows10になっているパソコンでは、「Windows10自体を最新版にする」ということで、常時予告なくアップデートが自動で行われていきます。3年もすれば、同じWindows10なのに内部の機構はぜんぜん違っている、ということが起こり得るのです。
ということは、パソコンメーカーとしても、特定の時期のWindows10に依存した付属ソフトはつけられなくなります。Windows10の更新に合わせて、付属ソフトもアップデートしなければならないからです。
マイクロソフトは、今回の「強制アップグレード」について国会質問されたことを受け、コメントを出していますが、
「通知のしくみは全世界統一で、日本だけ変更するのは難しい状況です。日本語の表記がわかりにくいことは社内でも把握しており、改善の検討は行っています。ただし、変更のお約束は今のところできません」(読売新聞報道-元記事削除)
ということです。
「日本だけ変更は難しい」・・・・つまり、日本は今まで、それだけ「変わった」パソコン市場を作ってきた、ということでもあります。携帯電話において、絶海の孤島で独自種が生き延びてきたガラパゴス諸島になぞらえて「ガラパゴス携帯」と言われたことがありますが、国内メーカーの独自仕様が非常に発達したパソコンに関しても「ガラパゴスパソコン」だった、ということではないでしょうか。
それが、今回の事件で、「世界標準のパソコン」へと変わっていくことを迫られています。使っている私たちも、「日本メーカーなら大丈夫」といった気持ちでパソコンを買うのではなくて、「普通のWindowsパソコンをどれでも使える」ようになる必要があります。
しかし、これまで私が、家電量販店や当教室でお会いしてきたお客様・生徒様の多くは、「日本製で簡単だからと言われて買ったけど、結局使いこなせない」という悩みを持っていらっしゃいます。また、インターネット各社はほぼすべてが「リモートサポートサービス」といったサポートを有料で提供しており、これらを利用している方は、逆に「リモートでやってもらったらうまくいった」「あれはいいね」とおっしゃいます。
もちろん当店でも、生徒様にはレッスン以上のサポートを提供し、「快適にパソコンが使える」環境をご提供しています。
それを考えますと、新品のパソコンを開いたら「これでもか」と「親切ソフト」が起動する、これまでの国内メーカーのパソコンは、結局意味がなかった、とも思うのです。
まして、ソニーや東芝のパソコン事業の不振を聞かされるとなおさらです。なぜ日本に、DELLやHP、Lenovoのような、世界的に通用するパソコンメーカーが少ないのか? という秘密も、ここにあると思います。
パソコンの「中身」が「自分のもの」ではなくなり、アカウントやクラウドだけが「自分のもの」になる時代
最後に、この「時代の変わり目」が意味するものの、もっとも大きなものは、これです。パソコンの中身は、もはやいつでも変えられるものとなり、「アカウント」や「クラウド」だけが自分のものになる時代が来ます。
すでに、企業向けの「シンクライアント」という考え方は、その極端な実例となっています。「シン」は「薄い」、「クライアント」は「端末」です。つまり、個人のデスクには、モニターと弁当箱ぐらいの小さい箱だけがあり、CPUとメモリーとLANだけがついている。電源を入れると、会社のサーバーからWindowsが(!!)送り込まれ、普通にパソコンとして使える、というものです。お勤めの会社やバイト先、図書館などで見かけることも多くなっていると思います。
当ブログでも、スマホが写真でいっぱいになっても、このアプリ1つあれば大丈夫。という記事で、「Googleフォト」を例として、「クラウドとはどんなものか?」ということをとりあげました。
抜粋しますと、「これまでは、スマホで撮った写真はスマホに入っている、デジカメで撮った写真はデジカメに入っている、というのが当たり前でした。Googleフォトを使うことによって、「あなたが撮ったすべての写真が、あなたのGoogleフォトに入っている」という考え方に変わります。」
このように、これからの時代は、便利で多機能なパソコン本体がもてはやされる時代ではありません。変わって、「どんなパソコンでも、ネットにつながってさえいれば、同じサービスが受けられる」という形態に、変わっていくのです。
ご自身の文書や写真も、これまでのようにパソコンの中に保存して、パソコンが変われば引っ越さなければならない、ということは、減っていきます。代わって、「IDとパスワードで守られた、ご自身のクラウド」に、すべてのものを保存し、パソコンが変わったら「ログインするだけ」で、もとと同じように使える、という形態になっていきます。
すでにマイクロソフトオフィス2016では、パソコンに一切保存せずクラウドだけで情報を扱うことができるようになっています。(まだパソコンへの保存もできますが、自然にクラウドを利用するような操作に変わっています)
これは、例えれば「個々人が無線機を持っていなければ通信できない時代から、電話局ができて電話がかけられる時代」への転換にも似ています。
パソコンは、クラウド利用の本格化で新時代へ。当教室でもサポートします。
これからの時代は、このような土台の上に築かれようとしています。勝手にWindows10にされるのは、確かに迷惑であり、困ったことなのですが、その背景にある「時代の流れ」を感じ、ビジネスで、プライベートで、ご自身のチャンスに変えていただければ、という思いで、本記事を執筆させていただきました。
志木駅周辺地域(志木市・新座市・朝霞市・富士見市ほか)の方は、ご不明な点がございましたら、ぜひ当教室にご相談ください。
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